コラム

2025年度のFIT制度では屋根設置型太陽光発電の買取価格が大幅に増額され、投資回収期間の短縮を図る新たなスキームが導入されました。
この制度改正は、工場や住宅の屋根を活用した太陽光発電の普及加速を目指すものです。

 

住宅用太陽光発電（10kW未満）の新制度

 

	2025年9月まで	2025年10月以降
買取価格（税込）	15円/kWh	24円/kWh（4年間） 8.3円/kWh（6年間）
売電期間	10年間固定	10年間（分割型）
主な特徴	単一価格	初期4年間で投資回収可能

事業用太陽光発電（10kW以上）の価格改定

 

設置タイプ	規模	2025年度価格（税抜）	特徴
屋根設置	10-50kW未満	19円/kWh（5年間） 8.3円/kWh（15年間）	前年比60%増
地上設置	10-50kW未満	10円/kWh	前年据え置き
地上設置	50-250kW未満	8.9円/kWh	0.3円下落

 

制度変更の背景

 

1. 初期投資回収の早期化

住宅用（10kW未満）：2025年10月以降に設置すると、最初4年間の買取価格が24円/kWh（従来比60%増）となります。これにより、投資回収期間が4年に短縮され、導入意欲が高まります。

事業用屋根設置（10kW以上）：初期5年間の買取価格が19円/kWh（前年度比60%増）。

 

2. 安定収益によるリスク軽減

FIT制度では10年または20年の固定価格で売電が保証されるため、市場価格変動の影響を受けません。

 

3. 政策目標との連動

政府は2030年までに新築住宅の60%に太陽光設置を義務付ける方針で、初期価格増額は目標達成に向けたインセンティブとして機能します。

 

4. 自家消費との組み合わせ効果

余剰電力の売電に加え、自家消費による電気代削減が可能です。

 

5. 国民負担の抑制策

買取期間を短縮（住宅用は4年、事業用は5年）することで、再エネ賦課金の増加を抑えつつ普及を推進。

 

新たな要件と注意点

 

1. 自家消費義務の厳格化

• 10～50kW未満（産業用）：発電量の30%以上を敷地内で自家消費必須（未達成時は売電権剥奪）
• アパート設置（20kW未満）は免除、工場/倉庫は対象外
• 住宅用（非FIT自家消費型）：増設時は既存設備を含め30%以上の自家消費率維持が条件

 

2. 構造・保安関連の新規義務

使用前自己確認（10～50kW未満）：2023年3月以降、稼働前に接地検査・絶縁試験・保護装置試験を実施

地盤調査と架台強度の構造確認が追加義務化

 

3. 補助金との併用制限

FIT認定を受けた設備は、環境省/自治体の補助金対象外

 

4. 地域活用要件（250kW以上）

新規認定案件（1,000kW未満）は地域貢献計画の提出が必須

 

5. 申請期限の厳守

分類	申請内容	期限	未提出時の影響
住宅用	設備認定申請	2025年1月7日	FIT価格15円/kWh不適用
産業用	設備認定申請	2024年12月13日	新価格制度対象外
全規模	使用前自己確認届出	稼働前	系統連系不可

 

6. 災害対応義務

• 自立運転機能の設置：停電時に住宅/施設内で電力を供給可能なシステム必須
• 自治体との防災協定：災害時に発電所を避難所の電源として開放する契約締結

 

7. 出力抑制リスク

360時間/年の無補償抑制：電力会社の要請で無通知・無補償の出力制限が可能

 

8. FIP制度移行条件

250kW以上の新規案件：FIT制度の対象外となり、市場連動型のFIP制度が強制適用

 

9. 技術基準の更新

• 架台の耐荷重基準：積雪荷重 JISC8955（2017）に準拠した再計算が義務化
• 地盤調査：N値10以上の地耐力が必須（軟弱地盤は改良工事必要）

 

10. 長期メンテナンス義務

20年間の定期報告：パネル出力劣化率（年1%未満）、パワコンの交換履歴

未報告の場合、FIT価格の減額措置が適用